福井鉄道再建問題 その後の動き(その11)

福井鉄道 モ888−889号

 ずっと追いかけているこの件ですが、また新しい問題が発生しているようです。
 福武線再建 協議暗礁に 朝日新聞
簡単にまとめるのは難しいですが、基本線は前回の処理スキームで各自治体の議会での了解は得られた。ただし、足らずの6億円はどうするんだと言われていて、再度福井銀行に債権放棄を頼んだけど、断られたということが一点目です。もう一点は、退職金の不払いについて是正勧告を受けていて、その支払期限がまもなく来るので、名鉄が負担する10億円で立て替えておくという提案をしたところ、行政サイドでは、それは予定の使途に反するので困りますということなったということです。
 退職金の支払いを待ってもらっていることじたい驚きですが、同社の資金繰りが非常に苦しいことを物語っているでしょう。退職金は、福井鉄道として負担すべき債務になるので、自己資金で融通できなければ、借り入れをしてでも払わなければならないことになって、結局、有利子負債が増えるだけでいいことがありません。名鉄が立て替えておいてくれるのであれば、そうしてもらうしかないでしょう。
 県としては、「目的は鉄道の存続で、会社の救済ではない」というのですが、会社をそのまま継続させる方法で再建を図ろうとする以上、潰れてもらっては困るはずです。むしろ行政が鉄道資産を買い取って別会社をつくるのであれば、退職金の不払いなどは行政に関係ないことになって、名鉄から提示された別案はそのようなものだったわけですが、検討の結果、今の福井鉄道という会社を存続することとしたわけですから、そうする以上は、福井鉄道としての債務6億と退職金の2億6千万は引き受けていかざるを得ないことになります。
 私的整理でも透明性の高い処理方法であれば、銀行も債権放棄に応じるでしょう。その場合、会社の事業は再生可能なものである必要があり、福井鉄道の場合でいうと、バス会社として存続するなら可能でしょうが、慢性的に不採算で、今後の設備投資の必要な鉄道事業を抱き込んだまま、再建することはできません。会社更生のような法的整理であっても同様だと思います。
 以上の次第で、名古屋鉄道さんも福井銀行さんも、理屈としては、もっともなことをおっしゃっていると思いますが、こんなことでは、行政主導で再生するにも、その前に福井鉄道という会社が資金ショートを起こして、立ち行かなくなってしまいそうです。会社がどうなるか分からない不安定な状態でも、地域のために毎日働いている社員のみなさんのためにも、例えば社会貢献のようなまったく別の観点から、格別のご配慮をお願いしたいと思います。検討の結果、行政が穴埋めできるなら別ですが、誰もお金が出ないとなれば、鉄道を別会社に切り離す方法に変えるほかないように思います。