福井鉄道再建問題 その後の動き(その9)

福井鉄道 802号

 21日に開催された福井鉄道の再建問題に関する官民協議会について、各紙が記事にしています。やはり継続的に追いかけている地元紙の記事が、問題意識としても、事柄の整理としてもよくまとまった記述になっていると思われるので、それを紹介しておきます。
 線路用地12億で取得 福武線存続問題で県と沿線3市 福井新聞
上下分離方式を採用するという大枠での処理の進め方は、前回書いたとおりなので繰り返しません。各者の負担内容をメモ程度に整理しておきます。
当面の再建支援

  • 名古屋鉄道筆頭株主) 10億円増資 → 株式を実質無償譲渡
  • 福井銀行(債権者) 金利減免、返済猶予
  • 県と沿線3市 鉄道用地の買取 12億円(県が8億円補助し、沿線3市が4億円で取得)

向こう10年間の支援

  • 橋りょう補修、4つの新駅設置、車両更新 国庫補助10億円、県24億円
  • 欠損補てん、線路や電線などの維持修繕費 沿線3市12億円

 この問題が表面化した直後は、名鉄側も行政側も、かなり突き放した印象がありました。しかしこの間、事務レベルでは、再建計画について詰めてきたことが分かります。結果、負債が6億円残ることになりますが、債務超過状態は解消されるわけだし、返済計画について債権者と話がついていれば、それでいいでしょう。会社を絶対に倒産させない前提ならば、金融機関も債権放棄をする理屈が立ちません。この方法は、鉄道用地の買取名目で行政が債務を肩代わりすると見ることもできるのが特徴ですが、これは1回に限り許されるものであって、今回「切り札」を使ったことになります。 
 今後10年間の投資については、以前から架替えが必要と言われていた日野川橋梁の補修と思われる費用、場所は不明ですが新駅と、おそらく200形の代替導入と思われる車両更新の費用が計上されています。これらは岐阜からの車両や変電設備を入れたこと、国からの補助が見込める状況にあることから、全体としては軽減されているはずです。新駅や車両更新は、いわば「攻めの投資」という側面もあるわけで、行政の福武線に対する覚悟を感じさせる部分でもあります。
 福井県議会では、来週の月曜日から定例会が開かれます。今回の「手打ち」のタイミングは、議会で具体案を議論できるようにと意識したものでもあるでしょう。また、22日には「福井市都市交通戦略協議会」でえちぜん鉄道福井鉄道の相互乗り入れ、福武線のJR福井駅西口広場への乗り入れなどが、目標として了承されています。
 えち鉄、福鉄乗り入れ具体案 福井市戦略協 目標に承認 福井鉄道
 10年後、福井鉄道が施設の使用料を払ってでも利益を出し、配当のできる会社になっていることを願いたいものです。そのためには、再建計画に従って、会社を堅実に経営していく必要があるし、これまでのようにずるずるとお客さんが減少する一方では話になりません。福武線を残すことにしたから、そこからはじめなきゃいけないこと、特効薬はないけれども、そういうことがこれからの根本的な課題であるように思います。