福井鉄道再建問題 その後の動き(その3)

福井鉄道 モ775−6号

 経営難に陥っている福井鉄道の再建のための官民協議会が開かれ、福井鉄道側から、3つの再建案が提示されました。
 福武線存続へ初の協議会 福鉄側が再建3案示す 中日新聞
 福武線存続へ3案 福鉄が再建方針提示 官民協議会初会合 福井新聞
 福鉄福武線、名鉄が経営から撤退・事業売却など3案提示 日本経済新聞
 福井鉄道:福武線再建3案示す 県の協議会が初会合 /福井 毎日新聞
これらの記事から読み取れる限りで、3案を整理しておきましょう。

  • 第1案 官民問わず第三者の出資による「鉄道資産受入会社」を設立し、固定資産を新会社に売却して、鉄道事業、従業員を譲渡する。
  • 第2案 債務の一部を名鉄が債権放棄して圧縮した後、名鉄保有の福鉄株を1株1円で第三者に譲渡する。
  • 第3案 名鉄が福鉄に増資を行い、増資で得た資金を借入金の一部返済、退職金の精算に充て財務体質が改善した後、名鉄保有の福鉄株を1株1円で第三者に譲渡する。

簡単にいうと、第1案は新会社を設立して鉄道部門を切り離す、現在の福井鉄道はバス、不動産会社として存続、第2案と第3案は名鉄の負担で債務を圧縮するか、増資するかして福井鉄道を建て直し、そのまま存続させるけれども、名鉄は手を引くということです。受ける側から見れば、第1案だと資産の買取資金が必要になりますが、第2案と第3案ではそれ相当の負債が残ることになるので、第1案がことさら不利というわけでもありません。
 いずれにせよ、福武線事業からは名古屋鉄道は手を引くということ、第2案と第3案では、バス事業等も含めすべてから手を引くということは、はっきりしています。ここで名鉄に代わる「第三者」を見つけてきて、第2案か第3案でやればいいように思いますが、名鉄が備忘価格で株式を譲渡するということは、株式が価値のないものと評価しているわけで、そういう株式を引き受ける奇特な民間事業者が現れるとは考えにくいでしょう。とすると第2案でも第3案でも、地元の地方公共団体福井鉄道の株主になるところにしか落ち着かないような気がします。
 どの案にせよ、今後の鉄道施設の大規模更新などは行政が負担しないと、事業として成り立たないでしょう。あるいは単年度の赤字補填も必要かもしれない。まずそれらを前提にすることが必要だと思います。それからどの案でいくか、私はバス事業が民間に残り、鉄道も負債を抱えずスタートできる第1案がいいように思いますが、資産買取に要する当面の費用も大きな問題と思われるので、第2案か第3案なら進められるということもあるかもしれません。あるいは、行政が福武線の面倒を見るという覚悟を決められるのであれば、長い目で見ればどの案でもあまり変わらないのかもしれません。