富山の路面電車の近況

富山地方鉄道 8002号

 富山で行われた路面電車等無料の日「おでかけウイークエンド事業」の結果を見てみます。
 おでかけウイークエンド事業:交通機関を終日無料運行 乗降客、軒並み上昇 /富山 毎日新聞
富山市長の記者会見でも詳細が発表されているので、併せてメモを兼ねて書いておきます。
 市長定例記者会見・平成19年10月1日(月)富山市役所

  • 8月19日の日曜日と比較して、富山ライトレール(3,510人→11,967人)、フィーダーバス(171人→671人)、まいどはやバス(558人→1,988人)は3倍強、市内電車では西町電停では10倍(1,418人→13,444人)、富山駅前電停では5倍
  • パークアンドライド駐車場は2箇所あわせて3日間では1,821台、1日平均では約600台
  • 歩行者通行量調査は、8月19日の日曜日と比較して、富山駅周辺地区では1.7倍、中心商店街地区では2.8倍

この試みそのものは大成功といっていいのでしょう。それが持続的なものになっていくのか、この記者会見の後半の質疑応答の部分で、非常に興味深い発言を市長がしているので、引用しておきます。

この事業の特長は運賃を無料にしたことです。無料であるから利用者が増えたといっても、それは当然だということになってしまうのですが、このようなことを「呼び水」にしながら、公共交通に回帰していくという暮らし方の中で、公共交通について考えるきっかけとしては大きなものがあったのではないかと思います。
 交通手段をすべて公共交通に移行しましょうというのではなく、「公共交通もいかがですか」という暮らし方を提案しているのです。
(中略)
 今後もいろいろな事業を展開していくなかで市民一人ひとりに公共交通を体感していただけたら、利用度はもっと上がると思います。無料化すれば利用度が上がることは実証されたわけですから、商業者を含めて今後どうやって「料理」していくのかが問われているのだろうと思います。

つまり、市民に対して、ライフスタイルの変化を求めるということですね。それは一朝一夕に変わるものではないし、例えば、ただ単に中心市街地の自動車の流入規制をやっても、富山のようにもともと自動車への依存度が高い街では、自動車で行きやすいところに人々が流れてしまう危険性をはらみます。今回のパーク・アンド・ライドにしても、メニューのひとつとして用意されただけです。むしろ、街の魅力を高め、公共交通の利便性を高めることによって、公共交通への自発的な転換を促すことが王道ではないでしょうか。富山の一連の取り組みの中で、強制的な自動車の交通規制を行ってこなかったことはあまり語られることがありません。しかし、私はとても重要なことだと思っています。
 先週の土曜日に路面電車環状化の有力ルートである大手モールも見てきました。ここなんかトランジットモールにすればいい感じだなと思いましたが、今のところその構想はないようです。
 路面電車環状化について 市へのご意見・ご要望に対する回答 富山市役所
「今後の研究課題と考えております」とのことです。部分的にはトランジットモールにようなものも、あってもいいんじゃないかと思いますが、安易に自動車を強制的に排除しない姿勢は、一貫しているようです。