鉄道車両と技術 第131号

鹿児島市電 7002号

 『鉄道車両と技術』という雑誌があります。車両メーカーや鉄道会社の技術者向けの予約購読制の雑誌で、原則として書店販売はしていないとのことですが、原則というからには例外があって、大阪だと旭屋書店本店の階段を上がっていく鉄道書売場で取り扱っています。ただし、私が買ったのは先週なので、現時点での店頭在庫は分かりません。
 その雑誌の最新の第131号は「特集:N700系LRT気動車の動向」になっていて、「LRT」に当たるのが函館市交通局9601号、鹿児島市交通局7000形、東京都交通局9000形の車両紹介と富山ライトレールに関する論文2題となっています。さらに、特集のタイトルには含まれないDMVについての論文も掲載されています。買っただけで読んでなかったので、メモ取りもかねて、新車3両の車両紹介を読んでみます。

  • 函館市交通局9601号
    • 他都市で導入されている車両も検討したが、軌間が異なるため、同形式で導入できるものはなかった。
    • 気候条件、線路条件(車庫内の半径16mのカーブ、出庫線のS字カーブ)など検討を重ねた。
    • 運転席の後に前向き固定の2人掛けシートを採用、路面電車ファンには格好の展望席になっている。
    • 台車は新設計、従来の車両で使用していたものと部品の互換性を持たせている。
    • ブレーキは電気指令式空気ブレーキを使用している。ドアの開閉も空気式である。
    • 滑走・空転防止にアルミナの粉末を車輪接触面に吹き付ける機器を装備し、空転を検知すると自動的に噴射する。
  • 鹿児島市交通局7000形
    • ワンマン運転を基本としながら、多客期にはツーマン運転にも対応できる。
    • 通路幅は最低950mmを確保した。
    • シングルアームパンタグラフは不具合時の対応を考慮し、構成部品をすべて国産化した。
    • A車、B車の台車は、従来車と同じ車輪径、駆動方式とし、部品、メンテナンス方式の共通化を図った。
    • ブレーキシステムは電動バネブレーキ、土閉装置はモーター駆動でエアレス化した。
    • 側面後方の視認性を確保するため、車外モニターカメラを装備した。
    • 1000形導入直後に発生したブレーキ、ドアの初期故障については、今回は重故障はなく運行できている。
  • 東京都交通局9000形
    • コンセプトはイベント等に活用する営業車両、人々の注目をひくような車両とする。
    • LRVタイプの車両も検討したが、最終的には8500形を踏襲しバリアフリーにも対応した。
    • 明治から昭和初期の東京市電をモチーフにした。
    • 車体寸法は8500形と同じ。床下機器配置もほぼ同じ。
    • バリアフリー対応のため、手すりや握り棒を増設した。
    • 速度40km/hでノッチオフする機能を追加した。
    • 2008年度にさらに1両増備予定。

 以上、目に付いたことを適当に書いてみました。この3両は同時期に同じメーカーであるアルナ車両で生産されていますが、例えば、鹿児島のはエアレス化を図っているのに対し、函館のは従来どおりの空気式を採用しているなど、各事業者のニーズ・希望に合わせた仕様になっています。比べてみると面白いです。できるだけ共通化すれば、コストが下がるのでしょうが、共通化の視点としては、そのユーザーの他の車両との共通化、つまりユーザーの事情が重視されているように思います。そして、それに対応していくメーカーも立派なものです。そうした相互作用の中で、おそらく「技術の進歩」が生まれているのでしょう。今日の画像は鹿児島駅前の「電車のりば」にいるニューフェースです。長くなったので、富山ライトレールの論文については、またの機会にします。