DMVの可能性
今日は新潟で大きな地震があって、亡くなった方も出ていると報道されています。事故や災害で命を落とすことは、どんな場合でも理不尽でありますが、地震のような突然の予期せぬ事態で命を落とすことの無念さは、想像に余りあるものです。ご冥福をお祈りします。
さて、最近『線路にバスを走らせろ』という本を読みました。さおだけ屋とか食い逃げとか、特に新書にはこの手のタイトルの本が多くてあまり好きになれませんが、この本の内容は線路を走るバス、すなわちDMVの開発をめぐるドキュメンタリーで、丹念に取材したオーソドックスなものです。
DMVについて書くのは久しぶりです。昨年静岡県富士市でデモ運行が行われ、今年の4月からは釧網線で試験的営業運行が始まっています。各方面からの注目も高く、例えばつい先日ですが、マニフェストにDMVの運行を掲げた宮崎県の東国原知事がDMVの視察に行くという記事も見かけました。DMVに漠然とした可能性は感じながらも、道路を走るバスで代替するほうが、コスト的にもいいんじゃないかとも思いつつ、そういう問題意識でこの本を読んでみました。
線路にバスを走らせろ 「北の車両屋」奮闘記 (朝日新書 56)
- 作者: 畑川剛毅
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2007/07/13
- メディア: 新書
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なぜバスではなくDMVか。端的にいうと、DMVは「我が社の線路の6割は、鉄道としての使命を終えている」というJR北海道が、鉄道路線を維持するための、ローカル線の究極のコスト削減策であるということです。つまり「鉄道ありき」なのです。バスを流用した車体が廉価であるというだけでなく、軽量ゆえに線路のメンテナンスのコストも抑えられ、保安装置も鉄道ほどの重装備を必要としなくなる。だから方向性としては、路線をDMV専用にし、朝夕の通学時間帯はDMVを連結して輸送力を確保しようということになります。
6割が終ってるなら、その6割を切ればよいという発想もあろうかと思います。しかし、そうすると結局鉄道会社としてのJR北海道のテリトリーを減らし、存在感も薄くし、総体として鉄道離れを招く。だから鉄道のネットワークは維持したうえで、コストを下げるための戦略を考える必要に迫られることとなって、DMVの開発につながったわけです。この本では、鉄道会社の公共性や「技術屋魂」が強調され、もちろんそれらも大きいのでしょうが、背景に、自らの存在価値を守り、高めようとする企業としてのJR北海道のしたたかさも感じました。
そういうことなので、コストが安いらしいから、三セクがやっている赤字ローカル線にDMVを入れてみようかくらいの発想だと、素直にバス転換する方がよい場合が多いかもしれません。鉄道会社としての企業を維持しようとする動機が不明確であれば、なおさらです。