鹿児島市電が走る街

鹿児島市電 2112号

 JTBパブリッシング路面電車シリーズは、今回は6月10日の路面電車の日に合わせて、鹿児島市電の本が出ています。鹿児島市電では、一部区間で芝生軌道が完成し、新型低床車ユートラム?が運行を開始した、いいタイミングでの出版となりました。構成は従来の本と同じで、電停ごとの新旧定点対比と市電の歴史、車両の紹介が中心となっています。

 このシリーズは、都電、玉電や大都市の市電といった廃止路線にはじまり、現役路線へと進んできました。廃止路線のときはノスタルジックな趣きでしたが、現役路線になると、それだけ新しい話題や前向きの話も多くなってきて、内容としては広がってきています。この鹿児島市電の本でも、巻頭にユートラム?の紹介があり、コラムで芝生軌道、ライトアップ、ICカードが取り上げられています。もっとも、主体は新旧電停の対比であることには変わりなく、その場所の思い出を語れる著者を得て、電車マニアでなくとも、昔の鹿児島を知る人は、街を懐かしんで見ることもできるし、車両の形式紹介やデータも抜かりなく、マニア的な興味にも応えるものとなっています。そして、いつもながら、貴重な写真が多方面から発掘されていて、感心させられます。
 ところで、鹿児島市電の併用軌道全区間のセンターポールの竣工が1992年、谷山電停へのバス停の併設が1996年、ICカードの導入が2005年ですから、どれも他事業者に比べると早いものです。最近の芝生軌道や超低床電車も含め、それらはすべて紹介されていますが、あくまで事例紹介にとどまっていて、鹿児島市電の「先取の気風」というべきものの表現としての評価があまり感じられないのが、あえて欲を言えば残念ではあります。
 あわせて、鹿児島市電のニュースを紹介しておきます。
 芝生が泣いている 鹿児島市電軌道敷に車 南日本新聞
交差点近くで、右折車が軌道敷に入り込むので、芝生軌道が傷むというものです。縁石でも並べりゃいいんでしょうけど、そんなことまでしなきゃいけないのかという気もします。