「広島電鉄白島線廃止」の提言について

広島電鉄 554号

 すでにコメント欄に書いていただいていますが、広島商工会議所広島市道州制の「州都」になる場合に必要な交通体系の整備に関する提言書を広島市広島県に提出しています。
 州都便の就航などを提言 中国新聞
 広島商議所:「州都便の就航や白島線廃線」 市長に交通整備の提言書 /広島 毎日新聞
 白島線 突然の廃線案 波紋 朝日新聞
提言書そのものがネットで公開されていないので、今のところ、知りうる内容は報道の限りということで、まずお断りしておきます。提言は5項目で、その中に「州都内交通の円滑化に関する基本戦略」というのがあって、駅前大橋、平和大通りへの路面電車の敷設と広島電鉄白島線の廃止が提言されているそうです。
 こういうところで、「白島線」が挙がってくることに、とても違和感を感じます。「州都の機能」などという大きな話が掲げられているにもかかわらず、白島線広島市の中心部八丁堀と白島を結ぶ1km余りの路線で、それを廃止したところで、たかが1kmの区間で自動車が走りやすくなるかもしれないというだけの、ごく局所的な話だからです。仮に、自動車の走りやすい街にしようという基本的な戦略に立つのであれば、路面電車の路線の廃止が出てくるのも理解できなくもないですのが、新しい路線が機能的に白島線の代替になるというならともかく、そうではないので、今でも交通量の多い駅前大橋や平和大通りに新しい路面電車の路線を敷設するという提言とも矛盾します。結局一貫性がありません。
 この提言書は、「同会議所運輸部会長の大田哲哉・同電鉄社長らが中心にまとめた」そうです。だから、積極的に廃止したいのか、消極的に容認させられたのかは不明ですが、白島線の廃止は広電の意向と無関係ではないでしょう。企業としての広電の収益構造を考えると、白島線を廃止した方が効率的であろうことも、想像に難くないところです。他方、毎日新聞の記事の市幹部のコメントからすると、行政への根回しはまったくなかったようです。
 社会経済的合理性を考えると、新路線の建設は、難しい問題が多いと思います。逆に言うと、既存の路面電車の路線は、我々の先輩から受け継いだ街の大きな財産です。それがたかが1kmの「盲腸線」であったとしてもです。路面電車を街の基幹的な交通機関にするというのであれば、既存路線の有効活用を抜きにすることはできないはずです。「提言」ですから、議論していただいたらいいでしょう。ただ、その際は、局所的な交通流対策のような「分かりやすいこと」だけで判断されないよう、お願いしておきたいと思います。