大阪市電の地図

最新 大阪電車地図

 地図を見るとき、その場所が行ったことのある場所かそうでないか、古い地図であったとすれば、その時代を体験しているかどうかで、地図を見る意味が大きく違います。今、広げている地図は、私にとっては、場所は知ってるけれども、その時代は知らないというそういう地図です。「最新大阪電車地図」という名前で、大正15年の「電気大博覧会」というイベントへの来場者のために作成されたものらしく、裏面は大阪の旅館案内になっています。『[rakuten:book:12040044:title]』という雑誌の最新号が「地図で訪ねる大阪の歴史」という特集で、その付録として、この地図が複製、添付されていました。
 本編の方に市電の回想を書いている宇田正氏の言葉を借りると、「人を運ぶのは市電、そして貨(荷)物を運ぶのは荷馬車」と決まっていたという時代の地図です。御堂筋はまだなくて、もちろん地下鉄もなく、大阪環状線は「城東線」しかありません。その代わり、市電網が市内縦横に張り巡らされていて、市電に乗ればどこへでもいけそうです。昭和元年の大阪市電の1日平均の輸送人員は約84万人、今日本一の規模の広島電鉄の輸送人員が1日平均が16万人だそうですから、そのスケールの大きさが分かります。まさに、大阪市電が市民の日常の足であった時代です。
 昭和初期には御堂筋ができて、地下鉄御堂筋線が開通するのが昭和8年、その後約30年を経て高度経済成長という時代を迎え、市電は大阪の街から消えていきます。この地図は、大阪という街の発展の過程において、路面電車が活躍できる規模と構造を備えていた時代の記録といえるでしょう。この地図を見ながら、ここからここへ市電に乗っていけたんだなあとたどってみると、単純に楽しいです。
 最近、都電の地図も出ています。
[rakuten:book:12012587:detail]
こちらの方は、昭和36年の地図と路線図、そして現在の地図に都電の路線を落とし込んだ大判の地図です。東京とか都電をご存知の方は、同じように楽しめるだろうと思います。