富山ライトレールと信用乗車

ポートラム カードリーダー

 富山ライトレールポートラムで後ろの扉からの降車が始まったという記事がありました。
 後ろ側扉からの降車順調 富山ライトレール 北日本新聞
 富山ライトレール、一部の電停で後方降車可能 北日本放送
ポートラムの乗り方は、多くの路面電車やバスで採られている方法、つまり後ろの扉から乗って、前から降りて、降りるときに運転士さんの横の料金箱で運賃を支払ったり、カードをリーダーにタッチするという方法です。これだと、降車時に車内での移動が伴うし、降り口が一つしかないので、降車に時間がかかる。だから、後ろからも降りられるようにしましょうというものです。午前7時から午前9時までに始発駅を発車した電車が対象で、上りの富山駅北、インテック本社前、奥田中学校前電停と、下りの蓮町電停のホームに係員を配置して、後ろの扉から降車できるようになったとのこと。
 ここまでならどうってことはない、例えば、広電のターミナルやラッシュ時の紙屋町などの乗降客の多い電停では、ずっと前からやっていることです。しかし、今月31日からは、現在ポートラムの出口に二つあるカードリーダーの一つを入口に移設して、ICカードを利用しているお客さんは、乗務員さんや係員さんがチェックすることなく、自主的にカードリーダーにタッチして降りてもらおうという予定になっていて、そうなると、今まで国内の路面電車にはなかった新しい試みになります。
 よくヨーロッパや北米のLRTの紹介として言われることに、「信用乗車」という制度があります。お客さんが自分できっぷを買って、電車に乗る。乗務員さんはきっぷをチェックをしない。だから、乗り降りがスムーズになるというもので、たまに抜き打ちの検査があって、きっぷを持っていないと、高額のペナルティが課されることで、タダ乗りが抑止されるというシステムだそうです。今回の富山ライトレールの試みは「信用乗車」の一種と見ることができると思います。それで、富山ライトレールの社長でもある富山市長さんが、富山市のサイトに、この件についてのエッセイを書いておられるのを読んでみます。
 信用乗車とは 市長ほっとエッセイ 富山市
理想と現実の間で悩まれているようです。これは割り切って言えば、電停や後扉に係員を配置するコストと、タダ乗りによる収入減との兼ね合いの話になります。しかし、おそらくそういう算段ではなくて、このエッセイを読むと、もっと別の次元で理想を描いているということが分かります。外国で「信用乗車」をやっているからといっても、必要性がなければ、たとえそれが好ましいすがたであっても、あえてやる意味はないでしょう。でも、乗り降りに時間がかかって、運行に支障があるというなら、この際、思い切ってやってみたらいいと思います。外国のようにタダ乗りへのペナルティがないという問題はありますけど、タダ乗りなんてのは、概括的な「民度」の問題じゃなくて、個人の人間としての「品位」の問題だから、「信用してみる」ということが、あながち無謀とは決め付けられないはずです。
 もっとも、怖いのは、タダ乗りが横行して、「正直者がバカを見る」という風潮が蔓延することで、その気配があるならば、敏感に察知していただいて、このやりかたをやめるという、別の「勇気」も必要だと思います。そのときは、富山ライトレールは均一運賃なので、都電や豊橋の市電のように、運賃前払にすることもできるし、そうすれば、降車の時間短縮にある程度効果があるでしょう。とりあえず、やってみてということで、いいんだと思います。