昭和30年代と路面電車と

都電 7504号

 日本全国路面電車の旅 (平凡社新書)の著者の小川裕夫さんが雑誌『荷風!』に昭和30年代の都電について書かれているというので、読んでみました。
 『荷風!』Vol.8「特集・“昭和30年代”東京」が発売!!: blog 荷風!
 昭和30年代の都電 | 都電ひとつばなし
都電の記事は、当時を知る職員さんにも取材し、都電の黄金時代とその時代を描いていて、興味深く読ませていただきました。めくっていると他にも面白そうな記事も多く、結局、全部読んでしまいました。それで思ったことを、ちょっと書き留めておきます。
 昭和30年代の東京の人々の暮らしに都電は欠かせないものでした。それは、端的に、都電がその時代の人々のライフスタイルに適合していたということでしょう。都電だけではありません。日本の大都市の路面電車はどこも全盛期を迎えていたのです。
 おおざっぱな言い方が許されるとすれば、太平洋戦争前に最初の全盛期を向かえた日本の路面電車は、戦後の復興期を経て、昭和20年代後半から昭和30年代にかけて、第二の全盛期を迎える。そして、大都市では、昭和30年代の終わりごろから衰退期に入り、昭和40年代に入ると多くの路面電車が廃止されていきます。トヨタカローラの発売が昭和41年、そして、誰もが自家用車を持つモータリゼーションの時代が到来します。都市の公共交通の担い手としては、以前からあった地下鉄や新たに出てきたモノレールが注目されるようになります。
 40年前のモノレールと今のLRT、あるいは、2〜30年前の新交通システムニュートラムなど)は、世の中への迎え入れられ方が似ているような気がします。例えば姫路モノレールの栄枯盛衰は、50年後に、これからできるかもしれないどこかのLRTと重ねあわせて語られるかもしれないと思うのです。実際にその時代を経験していない世代、私もそうですが、そういう人々が昭和30年代にノスタルジーを感じるのは、我々が失ってしまったけれども、失わないほうがよかったかもしれない何かが、そこにあるからでしょう。その何かを我々が取り戻せるのか、来るべき時代を、路面電車の時代だった昭和30年代に重ね合わせて、LRTの将来を考えるということも、あながち見当違いではないように思いました。
 今日の画像は、昭和37年にデビューし、唯一原形に近い形で荒川車庫に現存する都電7504号です。去年の秋の画像ですが、この電車はすでに休車扱いとなっているものの、車庫の有志のみなさんが、手入れをしているそうです。
 http://hw001.gate01.com/m92/hozonkai-top.htm
「「路面電車の日」のイベントで公開予定?」とありますが、本線走行はかなわないかもしれないけど、都電の全盛期を伝える存在として、線路の上に置いてやってほしいと思います。