伊予鉄道の挑戦

伊予鉄道 2101号

 引き続き伊予鉄道の話題、続き物のようでまだ第1回ですが、なかなか興味深い内容なので取り上げてみます。
 神尾寿の時事日想:伊予鉄道はなぜ、「FeliCa採用」に踏み切ったのか(前編)(1/3) ITmediaビジネスモバイル
e-カード常務取締役である西野元氏のインタビューですが、自由に要約するとこんなことです。

  • クルマが普及しクルマ中心社会になるという地方経済の変化が、人の流れを郊外に拡散させてしまい、中心市街部の空洞化と公共交通の衰退を招いている。
  • 時代の変化に対して、公共交通事業者はサービス品質の向上で対応するのではなく、運賃値上げといった形で利用者にコスト負担を求めてしまった。その結果、運賃値上げによって、さらに利用者が減るという「負け組スパイラル」に陥る。
  • 伊予鉄グループでは一転してサービスの向上に取り組んだ。運賃値下げ、運行ダイヤの見直し、車両と施設の近代化、さらに街づくりとの連携など。IT技術を積極的に導入した。その結果、平成13年度から利用者減少に歯止めがかかり、以降利用客数は上昇傾向になった。
  • 交通IT化の第2弾が非接触ICカードの導入であり、乗り換えの利便性を考え、鉄道、路面電車、バスすべて同時に導入した。FeliCa技術で特に重視したのが決済時のスピードの速さで、定時運行確保のために重要な要素である。ICカードは、いよてつ高島屋などグループ内の販売店事業と連携させ、総合的な決済サービスにすることができる。ここが導入の決め手である。

 参考として、伊予鉄のサイトの伊予鉄道のとりくみを見るといろいろあります。例えばこのようなもの。
 いよてつプロジェクト 松山発 夢・未来交通まちづくり 伊予鉄道公式サイト
 大都市圏だとクルマが多すぎて、通勤には電車の方が便利ですが、地方都市の場合は、通勤にしろ買物にしろ、相対的なクルマ優位は動かし難いものがあると思います。伊予鉄が成功した背景には、松山の中心市街地、例えば市駅周辺、大街道などが、決して地盤沈下を起こしてはいないことがあるのではないでしょうか。いくら値下げしても、きれいな電車が走っても、電車で行く先に何もなければ誰も乗らないわけで、そういう意味で松山には公共交通網が有効に機能し得る素地があったと言えます。
 ICカード化のメリットは指摘のとおりだと思います。それが現実の利用者増にどのように反映してくるか、注目したいと思います。今日の画像は、現在8両が運行されている新しい低床タイプの路面電車で、後ろにちょっと伊予鉄バスも見えています。