名古屋市電の保存車を訪ねて 2011

名古屋市電 1603号

 昨日の帰りに、名古屋市電1603号が保存されている刈谷市交通児童遊園に立ち寄ってきました。JR刈谷駅から線路沿いに歩いて10分くらい、近年、改修工事が行われたそうで、ゴーカートやミニコースターなどの遊具に1回50円で乗れる素敵な公園です。少し雨のぱらつく天気でしたが、園内は多くの家族連れで賑わっていました。
 ここで保存されている名古屋市電1603号は、一時荒廃していたようですが、公園の改修工事の際に再整備されました。おそらく子どもがぶら下がって危険だからでしょうが、つり革は撤去されていて、細かい部品が喪失していたりもするのですが、塗装なやり直されたこともあって、比較的良好な状態のように見受けられました。 
 名古屋市電1600形は、前後2扉のいわゆる中型車で76両製造されたそうなので、かなりの大所帯であったといえます。この1603号のようにワンマン化されたされた車両もありましたが、他社へ移籍したものはなく、現存する保存車両はこの1両だけになっています。
 ところで、この車両のコントローラーは蓋に「奥村電機商会」の刻印がありました。レトロでんしゃ館にある同じく名古屋市電の1400形にも同じメーカーのものが付いていますが、あまり見かけない珍しいものです。奥村電機商会は、日本の電車の黎明期の電機メーカーとしてはリーディング・カンパニーでしたが、昭和恐慌の際に破産しているので、なぜ昭和26年製のこの車両に取り付けられているのかはよく分かりません。いつごろ製造され、どのような電車に付いていたのか、1603号の新製時に機器流用したのか、何らかの事情で途中で取り替えたのか、このコントローラーのたどってきた道のりに思いを致すことができるのも、マニアならではの特権といえばいえるでしょう。