昭和の路面電車の本

名古屋鉄道 モ572号

 最近、同じテーマの書籍が相次いで出版されましたので、紹介しておきます。同じテーマというのは、「昭和の路面電車」で、いくぶん懐古的ではありますが、2冊のアプローチは対照的ともいえるものです。
 先に今日の画像を紹介しておくと、岐阜の街角で、もちろん平成になってから撮ったものですが、ちょっと「昭和」っぽいかなと思って選んでみました。おそらく昭和の時代もあまり変わらなかったでしょう。でも、今はもうここには電車はいません。
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 こちらの本は、一言で言うと、客観的な記録を目指したものです。口絵にカラー写真があって、後は各事業者ごとの概要が写真を交えて述べられ、車両紹介には形式写真が添えられているという、オーソドックスな構成になっています。車両紹介では、現存する路線は、最新の車両まで取り込まれていることも特徴でしょう。
 著者の撮影された写真も多く収録されていますが、斯界の諸先達の皆さんの貴重な写真も収録されていて、そういう意味で集大成となっています。
 内容については、私のような若輩者が言うことはありません。「関東・甲信越編ならば」ということで引き受けたと後書きに書いてありますが、それだけに豊富な裏づけが感じられる内容だと思います。
 ということで、続編の出版は難しいのでしょうが、希望としては、全国の分を揃えてほしいと思います。
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 こちらは写真家の諸河久氏が高校生から大学生にかけてのアマチュア時代に撮った、全国の路面電車の写真が収められています。時期としては、サブタイトルにあるように「東京オリンピックの頃」で、当時あった全国の路面電車を訪ねた、より「私的な」写真集です。
 構成は見開きに写真3枚が基本になっていて、説明は最小限にとどめられています。内容を一言で言っていいなら、「電車道」のスナップ集でしょうか。全編モノクロであることもあいまって、よりノスタルジックな感情を表に出しているように感じられます。
 紋切り型の表現で恐縮ですが、どちらも貴重な記録に違いありません。こういうのを見ると、残しておくということの意味を考えてしまいます。