市長選挙と堺のLRT

阪堺電気軌道 モ162号

 昨日投票が行われた堺市市長選挙で、新顔の竹山修身氏が当選しました。
 堺市長に竹山氏初当選 橋下府知事の応援受け支持拡大
竹山氏は、ムダ使い撲滅ということで、「堺駅堺東駅間のLRT(低床式路面電車)は中止」を掲げておられるので、同市の市長就任で堺市LRT計画は中止が確定することになるでしょう。
 もっとも、堺駅〜堺浜については明言していないようなので、シャープに約束しているとかでLRTをつくるということもあるのかもしれないですが、堺のLRT計画は、阪堺電車と一体となって、街の骨格をなすことに意味があったと個人的には思っているので、企業誘致のためだけに堺駅と堺浜の間だけにLRTをつくるというのは、それこそムダですね。シャープの従業員の通勤輸送があるんだとかいうかもしれないけど、そういうニーズを満たすだけなら、道路が特別混んでいるわけでなし、神奈中が走らせているような大きなバスを走らせればいいでしょう。輸送能力としてはLRTと変わりません。ほとんど終わりかけの事業でも中止だという時代ですから、現地にまったくかかっていない事業など、止めるのは簡単です。そういうことで、堺市LRT計画は頓挫から中止という結末を迎えました。
 終わったことをいっても仕方がないですが、LRTが変に争点にならなければいいがと懸念していたところ、結果的にはそうなってしまいました。振り返ってみると、時間をかけて地元説明会で総スカンで取り下げざるを得ない案しか策定できなかったことが致命的だったですね。さらに言うなら、絶妙のタイミングの悪さ。
 相乗り批判とか、地方分権とか霞ヶ関をぶっつぶせとか、それはそれでいいんだけど、首長選挙は、自分たちの街をどうしていくかで、政策を競うのが本来の筋だと思うんですね。そういうことがなくて、現職が推進している、地元がもめている、巨額の事業費とくれば、ムダな公共事業だとしてLRTが選挙の争点に仕立て上げられて、ただ、争点に仕立て上げられたわりには、市民が、自分たちの街の将来を思い描き、そこにLRTが必要かどうか、判断するような材料は提供されなかったように思います。それでもLRT中止が民意だということになるのでしょうが、議論が尽くされた結果としての市民の選択ではないと感じられることは、ちょっと心残りです。もっとも、現職も選挙戦終盤になって、LRTは「合意を得て推進」としていたのを「合意がなければ凍結」と180度転換する発言をされましたから、堺のLRT計画は、いずれ終わっていたのかもしれません。
 LRT計画が中止になると、阪堺電車の存廃問題が再浮上するでしょう。もともと、堺市内の阪堺電車は廃止ということで、会社側から市に協議の申し出があったものを、LRT計画に絡めて引っ張ってきたところがあるので、それが白紙に戻った以上、堺市としては、廃止前提での協議を受けるほかなくなるでしょう。そこで存続を探ることができるのか、全然分からないですけど、結局は「お金」を出す話にならざるを得ないので、あまり期待できないでしょう。あれを活用せずに廃止するのはもったいないと思うんですが、近いうちに阪堺電車も大きな転機を迎えそうです。