名古屋市 市電物語

名古屋市電 2017号

 Youtube名古屋市のチャンネルがありまして、「市電物語」という作品が配信されているのを見つけましたので、ご紹介いたします。昭和45年に名古屋市が製作したものだそうで、名古屋市電の廃止が昭和49年なので、全路線が廃止になる前に作られたということになります。
 私の感想めいたものは後で書きますが、先に動画を見ていただいたほうがいいかと思います。「その1」と「その2」の2分割になっているので、2つ貼っておきます。


 期待に違ってというのか、市電の走行シーンはあまり多くないですね。去り行く市電と伸び行く地下鉄という対比で都市交通の主役交代を示すことが、このフィルムの製作意図でもあったでしょう。とりわけ、最初と最後が漁礁になるべく運ばれ、沈められる電車の場面なのが、市電が過去のものであるという印象を強くしているように思います。
 「ドーナツ化現象」と「マイカー・ブーム」が路面電車の衰退の原因になったという、それは、当時のごく普通の見方だったと思いますが、いろいろ考えさせられるものがあります。それらは40年経って、「化」とか「ブーム」といった動きのあるものではなくて、都市の構造なりライフスタイルとしてすでに定着しています。では、なぜ当時の路面電車に対する「逆風」が「追い風」になっているか考えてみると、そこに「少子高齢化」とか「環境」という今日的なキーワードが介在するからで、社会の仕組みそのものは、それを前提条件と考えるのであれば、質的には変化していないのではないかと思います。名古屋のような大都市に路面電車がふさわしい乗り物であり続けることができたかというとそれはそうではないでしょう。しかし、前提条件としての世の中の環境が変わらないと見るならば、市電が一部でも残っていればそれなりに活用されていく方向は、あったのかもしれないと思いました。
 市電の廃車体が台船に載せられて、名古屋港を出て行くシーンが、いちばん切なかったです。