京都市電 最後の日々

京都市電 28号

 久しぶりに書籍の紹介です。『京都市電 最後の日々』、上巻が5月、下巻が6月の出版です。著者は親子の方で、他にも写真集を出しておられて、このシリーズでもN電の共著があります。お父さんが写真、文章の執筆が息子さんという分担だそうです。
 

京都市電 最後の日々〈上〉 (RM LIBRARY 117)

京都市電 最後の日々〈上〉 (RM LIBRARY 117)

 
京都市電 最後の日々〈下〉 (RM LIBRARY 118)

京都市電 最後の日々〈下〉 (RM LIBRARY 118)

 この本の見所は、古都の風物と組み合わされた市電の写真です。さぞかし膨大なストックの中から選ばれたであろうと感じさせるもので、写真の大きさ、トリミングなど、「写真を見せる」編集が行われていて、見ごたえがあります。高い場所から俯瞰した写真も多く、撮影に当たって、相当の労力を使われているだろうこと、そして、あらためて、京都の街のあらゆるところに市電がいたんだなあと感じます。
 京都市電は、大都市の路面電車の中では、比較的遅くまで残った部類に属します。それでも廃止から30年経って、今思えば、いくらかでも残しておけば、違っていただろうにと思いますが、それは今だから思うことであって、当時の状況からすると、やむをえなかったのかもしれません。それでも、代替になるべき地下鉄の開通が遅れたこともあり、もうすこしがんばっていれば、時代の変化が市電への追い風になったかもしれないとも思います。
 大部の書籍ではないですが、市電の記録を後世に残すという意味で、よい本だと思います。今日の画像は、烏丸五条のビルの1階に保存されているN電です。街を歩いていると、ふと市電の保存車に出会うというところは、他にはあまりないと思います。