福井鉄道再建問題 その後の動き(その2)

福井鉄道 610形

 動きというほどの動きがあるわけではありませんが、沿線地方公共団体に支援を求めるという福井鉄道は、今週は、先週の鯖江市に続いて、福井市越前市に出向いたようです。
 福井、越前両市に支援要請 経営悪化で福井鉄道 中日新聞
 福武線存続協議 福井鉄道が沿線自治体に要請 福井放送
福井市は重要な交通機関としたうえで、今後沿線の市や県と十分に協議していきたい」と強調し、越前市も「新たに行政との協議の場を設ける狙いをしっかり聞いた上で検討したい」と述べたとのこと。
 福井県には明日21日に申し入れを行う予定だそうですが、知事が議会答弁で発言しています。
 福鉄福武線存続 知事「沿線の熱意条件」 県会一般質問 福井新聞
 名古屋鉄道も「責任果たすべき」〜福井鉄道存続問題〜 福井放送
「福鉄の思い切った再建方針に加え、沿線自治体と住民の強い意欲がなければ存続はできない」、「これまでの経緯も踏まえ債務などの面で責任を果たすべき」として、「まずはグループの中での明確な再建方針が必要」と強調したそうです。
 県に頼りたい各市とやみくもに頼られても困る県という構図ができつつあるように思います。どうでしょうか。例えば名古屋鉄道福井鉄道の増資を引き受ければ、ある面では解決する部分があるのかもしれませんが、名古屋鉄道福井鉄道の経営を立て直す責任はあっても、鉄道部門を存続させる責任があるのかどうか。福鉄が名鉄の岐阜の電車を購入するというので、関係地方公共団体補助金を出したという限りでは、あるのかもしれませんが。
 参考までに、社団法人日本民営鉄道協会というところが、平成17年に出した「地方民鉄の活性化と再生を求めて」という報告書があります。国土交通省が公表した「地方鉄道復活のためのシナリオ」を参考にさせてもらったと「はじめに」に書いてあるとおり、内容としては格別目新しいわけではないのですが、ざっと読んでいたら今回の福鉄の問題に関連して示唆的なフレーズがあったので、引用しておきます。

地方民鉄の多くにおいて、少ない利用者がさらに減少する中で損失を出している状態では、減損会計導入により、資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合には、帳簿価格の減額が必要になり、その場合には一部の会社において金融機関からの借入れにも支障を来しかねない状況も考えられ、ケースによっては経営の面でさらに厳しい状況に追い込まれかねないことも懸念される。

『地方民鉄の活性化と再生を求めて』(PDFファイル)18頁

 この問題は、今後、親会社、金融機関と地方公共団体の駆け引きが行われると思います。鉄道を存続するという前提を維持するのであれば、おそらく行政が踏み込まざるを得ない展開になるでしょう。民間企業が会社を再建するために、不採算事業から撤退するというのは、一般的には当然の行動ですから。
 今日の画像は武生新の留置線に止まっている610形です。廃車になった300形の塗装になっています。柵の手前は福鉄が売りに出していた土地で、ワンルームマンションが建ちました。1部屋につき1台分の駐車場が完備されているようでした。