長崎電気軌道 168号のこと

長崎電気軌道 168号

 読売新聞九州発の連載、「近代遺産を訪ねて」に長崎電気軌道168号が取り上げられていました。
 長崎電気軌道路面電車168号〜長崎市 近代遺産を訪ねて
ここで近代遺産として選定されているものは、九州運輸局の調査がもとになっているようです。
 九州における産業・生活遺産に関する基礎調査について 九州運輸局(PDFファイル)
鉄道車両関係では、この168号のほか三井三池の電気機関車や宇佐の26号蒸気機関車などが選ばれていて、惹かれるものが多いですね。運輸局の言葉を借りれば、本当に歴史的な「物語性」や「美しさ」が感じられます。
 この168号については、「通常の営業運転に使用される日本最古の路面電車」としてここでも何度か紹介しているし、読売の記事にも書いてあるので、今日はこの電車の生まれた1911年(明治44年)の出来事について、ちょっと調べてみます。
 まず、路面電車業界でいうと、この電車がそこで働くことになる九州電気軌道(現在の西日本鉄道の前身の一つ)が開業しています。そして東京では路面電車が市有化され「東京市電」が誕生、現在の都電荒川線の一部となる王子電気軌道の大塚から飛鳥山間もこの年に開業しています。さらに阪堺電気軌道恵美須町から現在の堺の大小路まで開通、現存する大和川橋梁もこの年、横河橋梁製作所で製造されています。
 歴史上の事件としては、辛亥革命大逆事件が起こり、西田幾多郎が『善の研究』を出版、R.シュトラウスが「ばらの騎士」を初演、この年生まれた有名人は政治家だとレーガン元大統領、チェルネンコ、ボンピドゥー、日本人では児玉誉士夫岡本太郎藤山一郎などという感じです。羅列はしてみたものの、取捨選択に問題があるのか、いまいち見えてくるものがなくてすみません。そういう時代だったのかもしれませんが。
 この電車を作った川崎造船所兵庫工場では、この電車が製造された1911年に国産化第一号蒸気機関車も誕生しています。いまや世界有数の車両メーカーである川崎重工の前身が車両製造をはじめて4年後のことでした。