堺市 阪堺支援策提示(その2)

阪堺電気軌道 モ705号

 阪堺電車の支援策について、堺市のサイトに資料が上がっているので、新聞記事で既報ではありますが、見ておきます。
 阪堺線(堺市内区間)存続に係る堺市の支援策(協議案) 堺市(PDFファイル)
大きく見ると、1.利用者拡大策・運行継続に必要な経常的経費への支援(10年間で20億円程度。但し、年間2億円を上限)、2.高度化、老朽化対策のための支援(30億円程度)、3. 軌道運送高度化事業(公有民営化)についての3点で、第三者が参加する委員会での施策の効果検証等が行われるという仕組みです。
 今回の提示は、その内容として、阪堺側の要望をおおむね受け入れた形になっています。支援の手法は上下分離(公有民営化)ではありませんが、一般的に、なぜ上下分離方式(公有民営化)がよいかということを私の理解で書いておくと、保有資産に対する固定資産税や設備投資に対する減価償却が不要となること、つまり全体的な運営費用が低減できること、あらかじめ支援する項目を限定することによって、事業者の経営努力を引き出せることの2点だと思っています。そういうことなので、上下分離方式の導入には、法律的な手続きも必要になってくるので、直ちに移行はできませんが、トータルとしての合理性を考えると、この内容で合意が得られるのであれば、速やかに上下分離方式にした方が好ましいと考えます。
 ともかく、阪堺線の存続は市民の意見、それをどうやってくみ上げるのかはよく分かりませんが、それと市民の代表である議会にゆだねられることになりました。竹山さんとしては、チン電を廃止に追いやった市長として歴史に名前を残すことは、とりあえず回避されたわけで、市民感情に対する対面は守ったということはいえるでしょう。
 ところで、市民の意見を募ったとして、南海グループの金儲けを助けてやるだけじゃないかとか、自分は阪堺電車沿線に行くことはないから支援は不要という意見が出てくるかもしれません。この際、1点だけ普段思っていることを申し上げておくと、行政の施策の是非を論じるのに、特定の者しかメリットを受けないという論点は、いわゆる「タメにする」議論であって、本質的なものではないと思います。つまり、身近な例で言うと、「子ども手当て」にせよ、高校無償化にせよ、子どものいない家庭にはメリットがない、だから行政の施策としてやるべきではないとはならないということです。
 もちろん、街づくりに当たって阪堺電車を軸にして考えていくということは、長期的な視点として持っておくべきであり、そのような形でより多くの人がメリットを受ける可能性を広げていくことは不可欠でしょう。今後の議論において、市長さんには見識のあるリーダーシップを発揮していただくことを期待します。