時の流れを超えて

Cat-Tram2005-06-03

 『広電が走る街 今昔』を買ってきました。買ったのは水曜日の昼休みなのですが、内容が多いこともあって、読むのに時間がかかりました。
 ひとことで言えば、路面電車の沿線に焦点をあて、広島の街の遷り変わりを丹念に追ったもので、たんに分量が多いということではなく、写真、地図などの資料も豊富に掲載されており、背景には綿密な調査と長年の蓄積があることを感じます。もちろん40年前の2軸単車が連なって走る街を行く様子や草津駅に停車している軌道線の電車、相生橋を回送されている高床車など、マニア的にも貴重な写真も掲載されています。

 いちばん印象に残ったのはやはり定点対比で、街の景色が変わり、走っている電車が変わっても、レールが描く直線とカーブが全く同じで、それが場所の同一性を確固として示している箇所があることです。これには感動しました。あと、この本には「戦後までは」という表現が何箇所かあり、それが「現在は」に対置されていて、そこに大げさに言えば著者の方の「時代認識」が感じられて興味深かったです。
 瑣末なことですが、「貨50形」の説明のところで、「51号は昭和61年以降は運転されていない」とあるのは何かの間違いでしょう。51号は、昨年の秋の交通安全運動のときにも運行されていて、そのときの写真が本書118頁にも掲載されています。
 全体として、電車マニアはもちろんですが、そうでなくとも、ある世代以上の広島出身の方は、自分の思い出を重ねながら読むことができる本なのではないでしょうか。長年一つのことに取り組むこと、それを書籍の形でまとめて残すことの大切さを改めて認識させられました。
 今日の画像は、江波の電停にあった電停名の看板です。本書には電停名が「江波口」だったころの写真が載っていて、この看板も写っています。「江波口」の「口」がペンキで消されてずっと残っていましたが、つい最近撤去されました。